――――――――――――――――――chapter 6 メルカートで大騒ぎ!――――――――――――――――
うぅん…なんだか眠れないなぁ。ちょっと眠るとすぐ目がさめた。さっきの話が気になってか、落ち着いて眠れそうもない。昨日はすぐ眠れたのに。
なんだか頭が痛い、それで気分も優れないし。隣ではチコが『かーこー』と言いながら眠っている。気配を察して起きてしまうと悪いから俺は一旦外へ出た。風に当たれば少し気分が良くなるかもしれない。
外へ出ると調査隊基地が月明かりに照らされて両サイドにずっと続いている。それにしても物音一つしないな。
チコと一緒に見たときには綺麗だと思えた満月も、今はなんだかとても不気味に思える。
うぐぐ、なんか頭が痛いという感じではなくなってきたな。なんというか、『ザザザザ…』っていう雑音が流れ込んできてるような感じがする。
ん?これ『感じ』じゃなくて本当に流れているような??
*「ザザザ……ンゴ…聞こえるか?…」
それは話しかけられているというよりかは、頭の中に直接流れ込んでくるような感じだ。
「だ、誰だ!?」
反射的に俺はそういった、が、周りには当然誰もいない。
*「おい!…聞こえるか?…」
駄目だ、こっちから向こうへは何の干渉もできないようだ。
*「…時間が無い!!…ザザ…手短に話すぞ」
その声の存在すら疑わしいが、その声には何処と無く聞き覚えがある気がした。
*「ザ…お前は…ある使命を持って…姿を変えて…ザザ…その世界に行った」
雑音が混じって聞き取りづらいが充分言ってることは解る、『ある使命を持って姿を変えてこの世界にきた』?どういう意味だ??
*「お前の今の姿は…ザ…ただでさえ不安定だから…昔のお前を思い出させるようなことは…ザザザ…出来るだけいいたくないんだが」
こいつはどうだろう?記憶を失う前の知り合いで、俺を心配してこんな事をしているんだろうか
*「お前はそのうち…ザザザザザ…ってとこに行く…そこでお前は…ザザザザ…するためにそこに行った」
駄目だ、なんで一番重要そうな部分が全く聞こえないんだよ!
*「多分お前のことだから…ザザ…近いところまでもう…ザ…行ってると思うが、…ザザザ…絶対に失敗するなよ!!…ザザ…解ったな!!」
いったい何をするためにどこへ行ったというのか?それは解らないがこいつは俺の事を相当知っているんじゃないか?
*「あと、最後は…ザザザ…おそらく…ザザ…大切な人と別れる事になる…だがお前はそれでもいいと…ザ…その世界へ行ったはずだ」
え?それってどういうことだ??
*「まぁ本質を…見失わなければいい…ザザ…後はお前の好きにしろ!!…ザ…それだけだ!…ザザザ…お前とは多分近いうちに会う…じゃぁな!……ザ…しっかりやれよ!!…(プツン)」
そいつからの交信(?)は突如途切れてしまった、なんだったんだ今の?
いやそれも『大切な人と別れる』って…。
「ん、、シンゴ?どうしたの?なんかあったの?」
チコがまぶたをこすりながら基地から出てきた。どうやら起こしてしまったようだ。
「いや、ちょっと眠れなくってさ」
間違ったことは言ってない。
「、、ふぅん、ふわぁ…明日も早いよ。もう眠いから、、寝るね」
チコは頼りない足取りで基地の中に戻っていった。
さっきのあいつの言った事は本当のことなのかなぁ?俺の聞き間違いって可能性もあるし、本当にこの俺に伝えたいことだったんだろうか?。間違いであって欲しい。『大切な人』という言葉に俺はチコを思い浮かべた。大切な人と別れるだなんて…。ずっとチコと一緒にいたいな。
俺はチコに続いて基地に入っていった。
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*「チコ!シンゴ!!起きろ!中央広場に集合だ!!」
うおっ!うっせぇぇえ!この声は…
「エレキッドじゃない、どうしたの?」
チコはすっきり目が覚めるタイプだが俺はその大声で頭が割れそうだ。
「とにかく来い!解ったな!!」
それだけ言うと、エレキッドはさっさと基地を出て行ってしまった。ここから見ると他の調査隊もエレキッドに呼ばれ基地を出てきているのが見える。
「ううん、とりあえず他のみんなも行ってるみたいだし、行きましょうか?」
なんとなく『しかたねぇなぁ』的なオーラが漂う皆についていく。
中央広場に着くと昨日ダンジョンに行く途中でであった、ムクホークがサン・ポケ美術館の前にいた。
「あれ?ムクホークだ、何か事件かな?」
ムクホークは真剣な面持ちでそこにいた。そして皆が集まったのを見計らって切り出した。
「調査隊の皆さん、この付近に指名手配中のポケモンが逃げ込んだとの情報があります。」
広場が少しざわつく。あいかわらず渋い声だ。
「そのポケモンの種類は不明ですが、名前は『ファドルス』です。この情報を公開して皆さんのご協力を仰ぎます」
『それだけじゃぁ何も解らないよ!』と言った声が聞こえる。まぁ確かに種類がわからなくちゃな
「我々、警備隊も全力を尽くして調査中ですが、もっと沢山の情報が必要です。些細なことでもかまいませんので変わった出来事、不審な人物などを見かけたら連絡をしてください」
変わったこと、俺は自分がこの町に一昨日来たばかりなのを思い出した。
ムクホークは続けて、
「なおそのポケモンは記憶を失っている可能性もあります。それらしいポケモンを見つけたらむやみな行動を取らないで、出来るだけ早く伝言板で連絡してください。よろしくお願いします。」
ムクホークは皆を見渡すと
「何かお分かりにならないことはありますか?」
と聞いた。調査隊の皆はしばらくザワザワしていたが、特にこれと言った疑問も無いようだ。
ムクホークは何も疑問が無いのを確認すると、メインストリートを通ってどこかへ行ってしまった。
記憶を失っている可能性がある…だって?、まさか『ファドルス』って俺のことなんじゃ…?
「シンゴ…」
そんな思いつめた様子をチコが察したのか、チコが心配そうに声をかけてきた。励まそうとしているのは伝わるがどうやら上手い言葉が出てこないようだ。そのうちに誰かが叫び声をあげた。
*「おい、おめぇらちょっと聞け!」
皆それぞれに状況を把握し、ちりぢりになろうとした頃に、そう言ったのはコソドーロリーダーのボスゴドラ。今日は両サイドにドラピオンとグライオンがいる。多分コソドーロの他のメンバーだろう。それにしても3匹とも嫌みったらしい表情してるなぁ。
「今、この町に居るぜ、ムクホークが言ってた情報に当てはまるヤツがよ」
え?、俺とチコは目を合わせる。まわりの調査隊のメンバーは『誰だ?そんなやついたか??』などと言っている。
「いるじゃねぇか、一人よ、この町に最近来たヤツが。しかも昨日聞いちまったんだ、そいつは昔の記憶をなくしているのさ!、、なぁ、S&Tのシンゴくん??」
話の途中から調査隊の何人かは俺のほうをチラチラと見たりしていたが、最後の問いかけでみなの視線は一斉に俺のほうへと向いた。
「ちょ…待ってよ!シンゴは悪いことなんかしたりしないわ!!」
チコがボスゴドラの問いかけに対してすぐに反応した
「チコくん?ボクは今、シンゴくんに聞いているんだよ??どうなんだねシンゴくん??」
駄目だ、何も答えられない。自分が解らない。俺は指名手配中のポケモンなのか?
「ふん、答えてもらわなくても、チコのあわってぷりでどんなバカでも答えはわかるだろうがな」
チコは黙ってうつむいてしまった。反論を考えようとしているんだろうが…。無理も無い今俺が一番自分の事を信じれないんだ。
「こいつは充分すぎるほど怪しいよなぁ?さぁ、皆でシンゴを警察に突き出そうぜ!!」
何人かは半信半疑だが、それでも皆少しずつ俺に近づいてくる。万事休すか?俺、このまま警察に突き出されちまうのかな…。
「ちょっと…みんな、冗談でしょう??」
チコはぎこちない笑いを浮かべながらそう言った。だが、これが冗談なはずが無い。もう…駄目だ!!
*「一体全体なんの騒ぎだ!!」
右手の北東の道側からドンが現れ一喝した。一緒にロズレイドもいる。少し後ろにはぜいぜい言ってるエレキッドもいた。多分どこかのタイミングでドンに情報を伝えに言ったんだろう。それで警備隊とコンタクトを取るためにドンがここまで来たのだろうか?
ドンがここに現れたことでみんなざわざわしている。それと同時に調査隊の一員であるポケモンは縮こまってしまったようだ。
「ハァ…じ…ハァ…実はドン…」
エレキッドが呼吸を整えながらドンに耳打ちした。
「なるほどな、大体状況は飲み込めた、おいシンゴ!」
今調査隊の面々に囲まれている俺をドンは呼んだ。
「は…はい!」
空気読む能力が凄いなぁ、まぁそういう人じゃなきゃドンになれないか。
「お前昔の記憶をなくしてるのか?」
ドンがそう聞いてきた、言葉一つ一つにとんでもない威圧感を感じる
「そうなんですよ、ドン。こいつは…」
俺が少し間を空けると、ボスゴドラが口を挟む
「だまってろ!今、俺はシンゴに聞いてるんだ、どうなんだシンゴ??」
ドンがボスゴドラの発言を止めた。それでボスゴドラはかなり分が悪そうにしていた。
「は、はい…」
やっぱり警察に突き出されるんだろうか…?
「そうか、だがシンゴ、お前は悪いやつじゃねぇ、俺が太鼓判を押してやる」
へ?
「な…なぜですかドン!どう考えても怪しいじゃないですか!!」
またボスゴドラが口を挟む、さすがのボスゴドラもドンには敬語なんだな。
「シンゴは俺達、調査隊のファミリーだ。シンゴについてとやかく言うのはヤメろ。以上だ、文句は言わせん!」
みんなかなり動揺しているが一番動揺しているのは多分俺だ。
「な…なぜですか?ドン、俺も自分自身が信じられないのに…どうして」
俺は疑問をドンにぶちまけた。
「家族を大切にしない奴は男じゃない」
ドンは威圧感の有る声でそう言い放った。カ…カッコいい。
「ファドルスはシンゴじゃねぇ、他の誰かだ、以上でこの話は終わりだ。解ったな?」
ドンはそれだけ言うと、さっさと去って行ってしまった。
調査隊のメンバーはほとんど『シンゴは確かに怪しいが、証拠もないし、ドンにあそこまでいわれちゃぁな』みたいな事を呟きながら各自思い思いの方向に散らばって言った。
*「おい、シンゴ」
とボスゴドラが言った。ボスゴドラを筆頭にコソドーロのメンバー達が半分俺達の事を睨んでいる。
「俺はてめぇのことなんか信用しちゃいねぇ、いつかてめぇの尻尾を掴んでやる…解ったな!」
尻尾?掴もうと思えば今すぐ掴めるけど??、にしてもこいつらはなんで俺達をこんなライバル視するんだ?まぁ嫌な奴ってのはいつだってそんな感じだけどさ。
そうやって悪態をつくとボスゴドラは他の2匹とどこかへ行ってしまった。
「正直ビックリしたねシンゴ。あ〜なんか緊張したらお腹すいちゃった、ご飯食べて、それからダンジョン行きましょうか?」
しばらくの間を置いてチコがそう発言した。もう時刻は11時、朝食というか昼食だな。
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朝お昼を食べて伝言板を見にいくと、S&Tへの依頼が2件来ていた。一件は昨日と同じような依頼でしゅんそくのタネを取ってきて欲しいというものだったが、もう一件は…
「一緒にダンジョンを調査してください。…ですって、えっと依頼人はオタチさんね、場所は昨日と同じ疾風の草原ね…報酬は…ぇえ!700ポケですって!!」
おぉ昨日の2倍ほどももらえるのか。
「この依頼2件とも場所が一緒だわ、この際2件ともこなしちゃいましょうか!」
えぇ!?意外に欲の塊だなぁ。
「じゃぁダンジョン行く前に…シンゴ、その化石、邪魔じゃない?」
昨日ホーホーから貰った奴か、使い道ないし、第一重い、どうにかしたいとずっと思ってはいたけど。
「とりあえず、それ『ガルーラの倉庫』で預けちゃいましょうよ」
「うん、そうしようか」
重い思いとおさらばできるな。
俺とチコは倉庫に向かった
―――――――chapter 6 メルカートで大騒ぎ!:END chapter7 ダンジョン内で… に続く――――――