え?●●の●●?

そこへ行ったらこの物語は終わってしまうよ

この楽しい時間は消えてしまうよ

大切な人と…別れることになってしまうよ

でも、キミは…それを承知でこの世界に来たんだ


―――――――――――――――――――chapter5 S&T初依頼!――――――――――――――――――

 銀行に入ると、やはりそれらしい雰囲気になっていた。床はリストランテと違って木張りだし、カウンターの前に小さな花瓶がおいてある程度でほとんど飾り気が無い。フロアにはベンチが規則正しく並べられている。真正面には銀行員らしきコイルが2匹いる。

 *「S&Tのチコ様ですね、当行をご利用くださりありがとうございます。今回はどのようなご用件で?」
 銀行内を見渡していると、ホーホーが声をかけてきた。そのホーホーの声はやや大きめで明るく、ちょっと高い声だ。なんだか年齢不詳だなぁ、声だけ聞くととても若い印象を受ける

 「今日はこのワニノコのシンゴの口座を開きたいと思って来たの」
 ホーホーはチーム名変えたばかりなのにもうチーム名知ってるのか、まぁ多分ここの店長なんだしそういう情報は早いのかもな。

 「ほぅほぅ、わたくし店長のホーホーと申します。シンゴ様、ですね。では早速お手続きを…」
 ホーホーはカウンターに俺達を案内し始めた。なんか緊張するなぁ

 「お客様ラッキーですよ、いまなら新規で口座を作っていただきますと、『かせき』が貰えるんですよ」
 かせき?

 「わたしのときは『モモンスカーフ』だったわ」
 とチコはちょっとうらやましそうに言った、化石については全くのナゾか
 
 「ではこの紙にサインと、手形をお願いします」
 ホーホーは特大の朱肉を持ってきた、良く見ると調査隊のマークが付いている、これはこの町のシンボルにもなってるんだな

 「…はい、これで手続きは完了です。以後はここのカウンターにお金を持ってくればあなたの口座に入りますし、またいつでもお引き出し出来ますよ」
 ホーホーは『ちょっと失礼』と言うと、奥の部屋から化石を持ってきた。

 「見事な化石でしょ?」
 とホーホーも自慢げに鼻をヒクヒクさせた。聞かれもしないのに『私も欲しいくらいです』と付け足した、銀行の店長にしては結構単純そうだ。すくなくても悪い人ではなさそうだな。

 ホーホーから渡された化石を調査隊キットにいれ、結構な重みを感じながら俺とチコは銀行を後にした。

 去り際ホーホーが深々とおじ気をしているのがみえた。

 「なんだか照れくさいね」
 俺も今同じ事思っていたところだ、まるでチコが俺の気持ちを代弁したみたいだな。

 
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 「さてと、口座も開いたことだし、今から調査行きましょうか!」
 えぇ!?もうですか!?と心の中で俺は叫んだ。でもダンジョンってのにも興味あるなぁ

 「習うより、慣れろって言うでしょ?」
 まだ日も高いし、チコがそういうなら、いっちょ行ってみるか。

 俺とチコは伝言板を見るために噴水を横目にサン・ポケ美術館に向かう。

 「えっと私達S&Tへの依頼は…あったわ!『疾風の草原』であおいグミを手に入れてきて欲しいですって」
 簡単そうな依頼だな

 「報酬は、400ポケね」
 ピザ一枚より少し高い程度か。って、え?

 「チコって調査隊だけで食っていってるのか?」
 もしそうなら、どれだけ頑張れば次のランクにいけるんだよ、

 「えへへ、実はね他の事もやっているのよ。海辺で貝を拾って商店さんで売るの、けっこうお金になるのよ、中に真珠が入ってる『パールルモドキ』っていう貝が一番高く売れるの」
 苦労してるんだなぁ

 「まだまだ調査隊だけでは生活できないわ、早く『調査隊が仕事』って胸を張っていえるようになりたいな」
 チコは調査隊の仕事に誇りを感じてるんだな。

 「ランクが上がれば上がるほど報酬もぐーんと上がるから、頑張ろうね!!」
 そう言って張り切るチコに俺は付いて行く

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 「疾風の草原って何処からなんだ?」
 町を出てしばらくしてからチコに聞いてみた。

 「えっと正確にはカゴの木が並木になっている所からがダンジョンだけど、あのあたり一帯も疾風の草原って呼ばれているわ」
 つまり昨日俺が倒れていた辺りか。

 「あら?あそこに誰かいるわね??」
 道がそろそろ砂利道から草むらに変わってきた頃に、ポケモンがいた。

 *「こんにちは、私はポケモン警備隊のものです」
 渋い声で話しかけてきたそのポケモンはムクホーク、いかにも真面目そうだ。
 
 「この付近に指名手配中のポケモンが逃げ込んだらしいとの情報があり、ただいま調査中なのです。何か変わったことや不審な人物を見かけたりはしませんでしたか?」
 指名手配?ぶっそうだな、メルカートに来なきゃいいが。

 「うーん、特に無かったわ。…私達これから調査隊の仕事でダンジョンに行くから、何かあったら連絡するわ」
 今から行くダンジョンで出会ったらどうしよう。チコは心配じゃないのかなぁ?

 「そうですか、くれぐれも気をつけてください」
 ムクホークはさわやかに微笑んだ、なんかかっこいいな。横目でチコを見るとなんかうっとりしてる、だから憧れて無理してるんじゃないかとちょっと心配になる。

 ムクホークはこのままメルカートのほうへ向かっていくようだ。

 「大丈夫かなぁ、指名手配って言ってたじゃん」
 俺が不安むき出しで言った。

 「ほんとに危ないんだったら多分町に帰りなさいとか言われるわよ。」
 そりゃぁそうだけど、
 
 「町のことも心配だし…」
 ダンジョンから帰ってきて凄いことになってたらどうするよ?

 「町のことならドンさんもいるし、大丈夫よ!」
 チコは自信満々にそう言った。

 「凄い信頼感だなぁ」
 まだドンの事をよく知らない俺にとっては妄信みたいにも思える。

 「ドンさんが信用できなきゃ、調査隊なんてやらないわよ」
 チコは俺の疑問を見透かしたように言った。

 「さ!さっさと先に進みましょ!!」
 
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 疾風の草原に入って、見覚えのある光景に俺はここで目を覚ましたときの不安な気持ちをありありと思い出した。
 
 「ここでシンゴがお昼寝していたときはビックリしたわ」
 
 「え?うん…」
 お昼寝していたわけではないんだけれどなぁ、まだチコと出会ってから一日ちょいしかたってないんだなぁ
 
 「どう?シンゴ??自分のこと何か思い出せそう??」
 チコはずっと俺の事を気にかけていてくれたんだ。

 「まだ、なんにもだよ」
 せめてあそこに、何故いたかくらい思い出せればなぁ。それが手がかりになるかもしれない。

 「ビックリすると思い出せるかも?」
 それ、しゃっくりの止め方だろ?。と言おうと思ったが、チコは案外真面目な顔でそう言った。

 「そろそろダンジョンの入り口に着くわよ」
 
 俺はなんとなく調査隊キットに手を置いた、中には化石…いざとなったら飛び道具ぐらいにはなるかなぁ?
草原がいっそう草深くなっているところにカゴの木が並木になっている所が見えてきた。風が強いせいか、カゴの木が少し傾いている。その並木の入り口には立て看板があり、『ここからダンジョン、立ち入り注意!』と書いてある。

 「いくつかよさそうなカゴの実が落ちてるわね、ちょっと貰っておきましょう」
 たくましいなぁ、おい。俺もチコを少し手伝う。

 「これから初めてのダンジョンだけど、色々説明していたらキリが無いと思うわ。百聞は一見にしかず、さ!拾い終わったら行きましょ!!」
 チコはカゴの実を調査隊キットに納めながらそう言った。

 「シンゴ、私の手に手を置いてみて」
 カゴの実をあらかた拾い終わると、チコは短い足を差し出してそう言った。

 「こう?」
 なに?
 
 「S&T初依頼成功を願って…ファイト!」
 え?ぇ?俺が状況が飲み込めずおろおろしていると、

 「一緒に『ファイト!』よ、もう一回!」
 チコは仕切りなおして
 
 「S&T初依頼成功を願って…ファイト!!」
 今度は俺も上手く合わせることができた

 「よし!じゃぁ行きましょうか!!」 
 俺とチコはカゴの並木に入っていく

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 ダンジョンの通り道は真っ暗なのかと思ったがかなり明るい。そして大広間のような空間に出た。

 「意外に普通なんだな」
 
 「でもシンゴ、後ろを見てごらん、私達の通ってきた道が無いでしょ?」
 え?あれ!?無い!どうなってんだ?

 「これが不思議のダンジョンなの、毎回入るたびに形も違うし、入ったところから出れないのよ」
 
 「つまり、後戻りは出来ないって事か」
 想像より厳しいところみたいだ

 「早く青いグミを探して帰りましょ。そうね、シンゴはどの道を進みたい?」
 その大広間のような空間からは2方向に道が伸びている。運任せですすむんだよなぁ

 「じゃぁ真正面の道」
 どこでも変わらない気がする。

 俺とチコは真正面の道を進むことにした。曲がりくねった道をしばらく進むとまた大広間のような空間が出てきた。

 「あれ?さっきと同じ場所に戻ったのか??」
 
 「シンゴ、今通ってきた道は消えてないでしょう?さっきとは違う場所よ」
 お、本当だ良く見るとさっきの空間とは道の別れ方やその空間の形も違う。

 「どうするシンゴ?このまま進む?」
 
 「そうだな、このまま左の道に進もう」
 左の道を進んでいったらまた大きな空間が出てきたが、今度は真ん中に上へ行く階段があった。

 「やった、この部屋で正解ね。さ、上へ進みましょう」
 
 「草原なのに階段があるのか!?」
 
 「だから不思議のダンジョンなんじゃない?」
 チコはこの状況をなんとも思っていないようだ、冒険心(と収入)は恐怖心よりも大きいって事だろうか。
 
 「さ、2階いきましょ」
 俺とチコは階段を登っていったここまで特に怖い目にあってない、不思議な思いはしたけど。このまま抜けたいな。

 2階に上がったが、やっぱり1階と似たようなつくりの空間に出た。その空間からは3方向に道が伸びていた。『さっきと同じようなつくりだなぁ』と思ってふと見ると、今上ってきた階段が無い。

 「階段が無いぞ!?」
 
 「だから不思議のダンジョンなんじゃない??」
 チコはさっきと全く同じ口調でそういった、まさか階段まで消えるなんて。

 「さ、確率3分の1。今度はどの道から行きましょうか?」
 
 「右から順々にまわって行こう」
 何にもありませんように

 「そうね、何かおいしそうなものが落ちてると良いわね」
 相変わらず楽観的だなぁ。

 右の道を真っ直ぐ言った大広間に出ると急に野生のコラッタが飛び掛ってきた。
 
 「前歯に気をつけてシンゴ!!」
 ちょっいきなり!?

 コラッタはチコに体当たりを繰り出した、俺はあわてて『あわ』を繰り出す。コラッタを振り払ったチコは『はっぱカッター』を用意しているようだ、その間にコラッタは俺に『ひっかく』を食らわしてきた。痛いっ。

 「はっぱカッター!」
 はっぱカッターがコラッタに当たると、コラッタはそそくさと逃げていってしまった。

 「シンゴ!ナイスアシスト!!」
 ふぅ、初めてのバトル、なんとか勝利を収めることができたな。

 「チコ、怪我無い?」
 
 「大丈夫、ダンジョン内は歩いていれば徐々に回復するの」
 何から何まで不思議なところだなぁ

 「うぅん、どうやらこの部屋は行き止まりみたいね」
 あら、ホントだ、この空間からは俺達が来た後ろの道しか道が無い。

 「戻りましょう、ここはハズレみたい」
 最初の部屋に戻り、もう一度進む道を考える、今度は真正面に行くか。

 真正面の道を進むと、でた空間には真ん中あたりにきのみが落ちていた。

 「あ!やったわ!オレンの実よ!」
 ダンジョン内にはポツンとアイテムが落ちてたりするのか。

 「このオレンの実は食べると体力が回復するの」
 おぉ、すごいな。そういえばオレンって初日に食べたピザにも入ってたっけ。

 「でもここにも階段は無いわね、多分最後の一つの道ね」
 運が悪かったな、俺達は。でも案外チコはアイテムを手に入れられたのでうれしそうだ。

 また最初の部屋に戻り、最後の一本の道を進むと、今度は端っこのほうに階段があった。

 「さ、3階に行きましょ」
 俺は階段をややゆっくり上ってみた、すばやく振り返れば消える瞬間が見えるんじゃないかと思ったが、見れなかった。おかしいなぁ、確かに階段から来たはずなのに。
 
 「あ!シンゴ!!あれ見て!!」
 お、言われなくても『あおいグミ』がポツンと落ちていた。

 「やったこれで依頼達成ね♪」
 S&T初依頼無事成功、か

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 「ところでこれ何処にもっていけばいいの?」
 俺は町への帰り道でチコに聞いた

 「あぁこれはね、サン・ポケ美術館に持っていけば預かってくれて、明日になれば依頼主から銀行の口座に報酬が振り込まれているはずよ」

 「って言うことは依頼主って誰だか分からないのか?」
 なんかスパイみたいだな

 「今回みたいに簡単な依頼だと分からないこともあるわね」
 このくらいでいちいち名前をさらす奴はそう多くないのかなぁ

 「依頼主は俺達のこと何処で知ったんだ??」
 
 「それはね、依頼はドンさんのところに届いてドンさんが振り分けているの」
 なるほど

 (ぐぅ〜〜)
 そう会話していると俺の腹の虫が鳴った。なんか異様に腹減ったな…

 「ははは!ダンジョン内では普通に生活してるよりはるかにお腹のすくスピードが速いからね!!」
 こんなにお腹すいて報酬が2人(匹)でピザ一枚より少し高いくらいって割に合わなくない?

 「さ、早く帰ってリストランテで食事しましょう♪」
 チコはなんだかさっきからかなりゴキゲンだ、よっぽど初依頼が成功したのがうれしかったんだな。

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 サン・ポケ美術館に寄った後に、大量に拾ったカゴの実をリストランテで買い取ってもらい、そこそこの収入を得た俺とチコはそこでタリアテッレっていう凄くおいしいがなんだか分からないものを食べた、まぁうまかったからいいか。
 
 「うぅんお腹もいっぱいになったけど、まだ寝るには早い時間ね」
 かなり日は暮れてきたが、確かにまだ寝る時間じゃないな。

 「そうだ!シンゴ、私の家からすぐ南に海岸があるんだけど行ってみない?良い運動になるわよ??」
 さっき食ったタリア何とかは確かにボリュームがあったなぁ、このまま寝るのはキツイ気がする。
 
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 チコの家から十数分ほどで海岸が見えてきた。サン・ポケはここから上陸してきたのかなぁとか思った。

 「ん〜いい磯の香りねぇ、海はいつ来ても飽きないなぁ」
 満月の光が優しく波を照らし出している。星も海に映って海と空が一つになっているようだ。
 
 「きれいだなぁ」
 なんか洒落た事を言おうと思ったが言葉は出てこなかった。

 「こんな綺麗な景色見たこと無いでしょう?」
 チコがごく自然に聞いてきた

 「…見たことあるのか無いのか、それも分からないなぁ」
 なんだか胸が切なくなる。

 「あ!貝殻、シンゴもほら!拾う、拾う!」
 そういえば貴重な収入源だったな。
 
 貝を拾いながらチコは俺の表情をおしはかるようにして
 「もしかすると、明日になったら…」
 と言った。
 
 「うん、そうだね、もしかすると明日になったら何か思い出せるかも」
 チコにちょっと気を使わせてしまったみたいだ。

 「今日は疲れたねぇ…もう寝ましょう」
 チコと俺は基地に戻っていった。

 *「へぇ…あいつ記憶を失っているのか」

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 俺とチコは寝床についた、ふわぁあ…ここに来ると一気に眠たくなるな。

 「そういえばチコ、昨日の夜、何か言いたいことがあったんじゃないの?」
 今日は結局それらしいことは一言も言っていないと思うが。

 「あぁあれは今朝言った新しいお店に回ってみたいんだけど、って事を言おうとしたのよ」
 あれ?そうだったのか?ならいいんだけど。

 「じゃぁシンゴ、おやすみ。明日も頑張ろうね」
 うん、お休み…  Zzz

―――――――――chapter5 S&T初依頼!:END chapter6 メルカートで大騒ぎ! に続く―――――――