―――――――――――――――――chapter20 ジュペッタのトレード店―――――――――――――――――

 朝起きて、初めての店、「トレード店」に入ると、俺とチコは店内の異様な雰囲気に後ずさりしそうになった。

 まず何より暗い、なぜなら窓が異様なくらい小さく、はめ殺しの窓だ。しかも曇りガラス。

 明かりの類はランプが一つ置いてあるだけ。

 木の板で下から支えてあるだけの簡単な棚が両側の塗り壁にいくつも配置してあり、そこにはビンが並べられている。空瓶もあれば木の実やカード、なんかよく解らないものが入っているビンもある。トレードに使うのかなぁ。

 その下には引き戸で俺たちより小さい丈のタンスもある。微妙に扉が開いてるのもあるが、覗いたら、異次元にでも吸い込まれそうだから、なんか開けたくないな。やめておこう。

 床は木張りで、歩くたびにきしきしと音がする。今にも板が抜けるんじゃないか。

 何より一番怪しく、かつ目立つのが正面にあるでかい壺、カウンターのようなスペースで囲まれている。壺は茶色く、俺たちよりもでかい。怪しい煙が立ち上っているが、中には何が入ってるんだろう…?。

 壁の角には、あちこちにクモの巣も貼っている。何年掃除して無いんだろ。

 というか、ホーホー銀行と同じ材料使って作ってるのに、よくもまぁ、ここまで怪しい雰囲気出せるよ。

 *「いらっしゃぁい」

 「うわぁああぁ!!!」
 背中から突然ささやくように声をかけられ、俺は思わず叫び声を上げた。ま、全く気配しなかったぞ。っていうかいつの間に後ろに行ったんだ!?。声もかなりこもった声で、幽霊にでも話かけられたんじゃないかって思った。

 「あぁ、ビックリしました!ジュペッタさん」
 チコも動揺を隠せない。

 「はじめまして。くくくく…。」
 その含み笑いやめろ。

 「S&Tのシンゴ君とチコ君だねぇ?、今日はここに何のようだい?」
 ホーホーさんが俺たちのチーム名知ってたときは違和感なかったけど、この人が知ってるとなんか怖いよ。怪しげな術でも使って俺たちが今日来るのを知っていたんじゃないかって気さえする。

 「この道具なんだけど…これって『チコリータカード』よね?」
 チコリータはおそるおそるバックから道具を取り出した、なんか取って食われるんじゃないか、って気さえしてきた。

 「ふぅん…どれどれ。」
 ジュペッタはチコから道具を受け取りじろじろとながめだした。

 とジュペッタは突然チコリータに目を移した。

 「そういえば君…。人間なんだってねぇ。」

 「は、はい。そうですけど…?」
 ジュペッタに突然聞かれたチコはややしどろもどろに答えた。

 「ふぅん…。」

 …えぇ!?。なんなのこのやり取り。ただの世間話なんだろうが、この人が言うとなんか深い意味があるんじゃないかって思っちゃうよ。

 ちょっと間を置いてジュペッタが、
 「たしかに『チコリータカード』だねぇ」
 と言った。

 「えっと…どんな効能があるんですか?、名前だけは知ってるんですけど。」
 チコって結構情報通よな。

 「持ってると君の特防が3上がるよ。」
 カードすげぇえぇ。

 「トレードしたらもっといい道具になるって聞いたことがあるんですけど…?」

 「残念ながらこれ一個じゃトレードは無理だね。もう一つ『チコリータのツメ』ってアイテムがあれば、『あさひのほうじゅ』っていう結構レアなアイテムと交換できるよ。」
 
 「一つじゃトレードは出来ないのね…初めて知ったわ。」
 チコは俺のほうを見てそう言った。

 とジュペッタは何かを思い付いたように、
 「…そうだね、あいつなら持ってるんじゃないかな?」
 と言った。

 「あいつ?」
 誰だろう。

 「ホーホー銀行の店長、ホーホーだよ。あいつ物集めるのが好きだからね。一番好きなのはお金だけどねもちろん。くくくく…。」
 確かに化石ただでやっちゃうくらいだからな。もしかしたら持ってるかも。

 「とりあえずこれは返すよ。もし手に入ったらまた、おいで。」
 『おいで』になんか力がこもってるような。ジュペッタさんからチコリータカードを返してもらった。

 「とりあえず、銀行に行ってみましょうか?。」

 「そうだね。」
 俺とチコは少し逃げるようにして、店を出た。

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 俺とチコは店長の中では比較的まともな人がいる店に入った。(あとリーシャンとバリヤードくらいか?まともなの。)

 あれ…?銀行に入ると見たことがある後姿が…。

 「お、あんさんたちなにしに来たん?」
 不良ネコさんだ。その人物は俺たちの姿を確認すると、親しげに近づいてきた。

 「あ、ザングースさん、どうしたんですか?こんな所で?」

 「商売や。」
 こんな所でもやってるのか、何してるんだろう。

 「え?」

 「ははは!冗談や、冗談!そんな真に受けるなや。あいかわらずノリが悪いで。」
 冗談かよっ。真に受けただろ。反応からしてチコもそうみたいだ。

 「あんさんたちに、よう儲けさせてもろたんで、お金預けに来たんや。」
 この人キャラ濃いよな…。

 「商売繁盛、福の神やな。『あのS&Tが修行した鍛錬所』って銘打ったらな、人が仰山来るようになってな、笑いが止まりまへんわ。」
 勝手に名前使うなよっ。

 「ほんなら私たちS&Tにもいくらか、くれんと。」
 チコって…。

 「いいでぇ〜お姉ちゃん。一緒にコンビ組まんか?」
 なんのっ!?。

 「そやそや、あんさん達。この銀行になにしにきたんや?」
 この人と話しているとその内日が暮れそうだ。面白いけど。

 「えっとホーホーさんに『チコリータのツメ』っていうトレードに使う道具もらえないかって思って…。」

 「そっか、ホーホーさん、意外に渋ちんやからな。そや、わてが頼んだろか?」

 「え?お友達なんですか??」

 「こう見えても結構なか良いんやで。『お金仲間』って事でな。」
 どんな仲間だよっ!。

 ザングースはお金を預けると俺たちを連れてホーホーさんのところに向かった。

 「ホーホーさん、こんにちは。頼みがあるんですけど…?」

 「おや、チコさん。どうしたんでしょう?そんなにあらたまって。」

 「偶然『チコリータカード』っていう道具を手に入れたんだけど、出来ればより強力なアイテムにしたいと思いまして…それで『チコリータのツメ』が欲しいんですけど、持ってないでしょうか?」

 「『チコリータのツメ』…ですか、一個だけ持ってるんですが…。コレクションしてるんですよ。化石はもうやりつくしたんで、すべてのトレードに使う道具を集めようかと思いまして。」
 コレクターだったんだな、この人。

 「そうか、そらあげれんわな。わてならやらん。ケチ仲間同士、心はひとつやで。」
 頼んでくれるんじゃなかったのか。というかケチっていうの自覚してたのか。

 「ケチというわけではないんですけど…一個だけなんでねぇ」
 それを聞いてホーホーはやや動揺しながらそう言った。

 「このS&Tのおかげで、わても仰山もうかったからなぁ。あれをおろせば、そのくらい買えるやろな…。よし、おろしに行くか。」
 ザングースは後ろに方向転換しようとした。

 「あぁ!ちょっとおろさないでくださいよ。」 
 あわててホーホーは制止する。 
 
 それに畳み掛けるように
 「そういうてもなぁ。あげられへん言うてる人がおるからなぁ。一個しかないんじゃしょうがないわなぁ。」
 とザングースは言った。

 「解りましたよ!あげます。あげればいいんでしょ。また、集めますよ。」
 勝負あったみたいだ。ザングースは俺たちに親指を立てていかにも『してやったり』みたいな表情をした。何だかんだ言って説得してくれてたのか。

 「あ、ありがとうございます。」
 とチコは深々とお辞儀をした。

 ホーホーが道具を取ってくる間、ザングースさんにチコは、
 「助かりました。」
 と言った。

 「高いで。」
 それに対してザングースはにやりと笑いながら言った。

 「え!いくらですか?」

 「ほらまたそうやって真に受ける。真に受けすぎやであんさん達。まだ修行が足らんなぁ。」

 「そや、今度また鍛錬所に来てな。そんとき写真撮らしてな。『S&Tが修行した』を疑う奴がおるねん。」

 「高いで。」
 それに対してすぐチコはこう返した。チコって…。

 「ははは!ほんじゃわてはそろそろ鍛錬所にもどらにゃあかんねん。『昼休み』って言い張るのもそろそろ限界や、じゃぁまたな。」
 と言いながらザングースは去って行った。まだ午前中なのにお昼休み取るなよ。

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 ホーホーに『チコリータのツメ』という道具を受け取った俺達はもう一度ジュペッタのトレード店に行くことにした。

―――――――chapter20 ジュペッタのトレード店:END chapter21 あさひのほうじゅ に続く――――――