―――――――――――――――――――chapter18 サン・ポケの足跡―――――――――――――――――― 
 いつも通り朝チコに起こしてもらって朝食を食った。その後、図書館に入ると、サーナイトはすでに図書館にいた。テーブルには本が何冊も積んである。全部読んだのかっ!?

 「おはようございます。サーナイトさん」
 チコは真剣に百科事典のような大きさの本を読みふけるサーナイトに声をかけた。

 「あ、チコさんシンゴさん。おはようございます。」
 サーナイトは座りながらも会釈した。

 「今、この『メルカートの歴史』って本を読んでいたところなんです。なにぶんにも本が沢山あるもので、関連していそうな本の何冊かもう読んでしまったんですが、私が見落としてるものがあると思いますので、チコさんとシンゴさんも探していただけますか?」
 サーナイトの手元は他にも、『未解決事件』とか『不思議な出来事』とか『ダンジョン一覧』とか『歴史的なバトル』…色々あるなぁ。

 「解りました。じゃ、シンゴそっち側お願い。」
 といいながらチコは半分から右側を短い足で指した。

 「うい。」

 本棚はアイウエオ順に本が並んでいて、俺は『あ』のほうから順々に本を見て行った。

 こうして見てみると色んな本があるなぁ。

 『傘』…『ゲーム熱狂者』…『ジュニア企画』…『情報媒体の製造所』…『全ての日の青空』…『創造者』…『小さな製造』…『テレビ特許』…『天から任じられた社(やしろ)』…『天才の反響』…『富』…『中村ソフト』…『7から11』…『春の研究室』…『ポケモン型の蕪、いわゆる蕪ポケ』…『幕土成度』…『円い空』…『万の代』

 なんか聞いたことあるな…。

 俺はその中の本の『伝説のポケモン』という本が気になり手に取った。他には『ポケモン調査隊の調査記録』とか…ま、この辺りを持ってくか。

 「ちょっとシンゴ!助けて!!」
 俺が3〜4冊の本を小脇に抱えてサーナイトさんのほうに向おうとすると、チコの助けを求める声が聞こえた。

 俺がチコのところにつくとチコは自分の身長と同じくらいの高さの本を『つるのムチ』を駆使しながら、持っていた。だけれど、今にも崩れそうだ。

 「え、えっとどうすればいいの?」
 こんな危機的な状況で呼ばれても。

 「え〜っと上のほうからこう持って、それが、あぁだから…」

 「ちょっと、わかんないよ!」
 と言い終わらぬうちに本は崩れてしまった。俺もチコも本の雪崩に襲われた、痛い、痛い!

 「う〜ん、、チコ…生きてる?」

 「本に埋もれて死にそう…。救助して。」
 ふざけてるし大丈夫だな。

 俺もチコも床一面に広がった本を拾う。ん?

 「こいつは…。」
 俺は落ちた拍子で開いた本に目が止まった。

 「え?どうしたのシンゴ。」

 「そうだ、こいつだ!謎の声の持ち主!!」

 「謎の声?」
 そういえば知らないんだっけ。

 俺はチコにこの世界に来てから2回聞こえた謎の声について話した。

 「へぇ…そんなことがあったの。その人ってシンゴの親友だったんでしょう?」

 「うん、」

 「でもそのポケモン……?。」

 「大丈夫ですか?シンゴさんにチコさん?今、ものすごい音がしましたけど。」
 サーナイトが音を聞きつけてやってきた。

 「私がちょっとね。ご覧の通りです。」
 辺りにはまだ本が散らかったままだ。

 「本をひっくり返してしまったんですね…。お怪我はありませんでしたか?」

 「大丈夫です。」

 サーナイトも一緒になって本を片付け、数冊の本を選びなおしてから、テーブルに向った。

 いつの間にかサーナイトの手元に積まれている本が増えてる。凄いな。

 俺はさっきのポケモンの情報について詳しく読み始めた。なんかこいつは関わってる気がする。

 …。

 チコのほうをチラ見すると、『ポケモンと人間の歴史』という本を読んでいる。

 …。

 サーナイトは今『調査隊が巻き込まれた出来事』という本を読んでる。

 …。

 俺、こういう状況結構苦手何だよな。誰か喋れ。

 という俺の気持ちを察したかのようにサーナイトが話しはじめた。
 「似たようなケースがなかったかどうか調べてみたんですが…。今まで読んだ本の中ではそれらしい話は見つからなくて…。」

 「そうですか…。」
 チコは残念そうに言った。

 「…実は今日ここにお呼びしたのは、もう一つお伺いしたいことがあったのです。」
 サーナイトは俺たちに顔を寄せて前かがみになりながら小声でそう言った。

 「え?」

 「どうしても3人だけで話したいことなので…。」
 リストランテだと誰かに聞かれるもんな。

 「はい、なんでしょう?」

 「チコさんをこちらの世界にご案内してから、チコさんのことは陰ながら見守っていたんです。それで、シンゴさんがどういう人かわかるまでは少し不安でした。」

 「そうですね、俺が突然現れたんですから。」
 この人も色々と考えているんだなぁ。

 「えぇ。そして、あの事件で人間の世界に帰るはずだった、チコさんが戻ってきた。もしかしたらシンゴさんが何か関係しているのではないかと、考えてみたわけですけど…。シンゴさんはどういうお人なんですか?」

 「えっと…。」
 何処まで話していいかなぁ。

 でもサーナイトさんの慎重で思慮深い性格を考えるなら、話しても大丈夫だろう。

 チコもなんとなくそんな感じの目配せをしている。

 「…俺、未来から来た伝説のポケモンなんです。」

 「なるほど…。」
 サーナイトは意外に思える話にもビックリする表情をまるで見せない。

 「…。」
 サーナイトは俺の話の続きを待っているようなので、さらに詳しく話を続ける。

 「チコとポケドーロの3人は俺のいた未来では、グラードンとカイオーガのバトルの強大なエネルギーによる爆発に巻き込まれ…生死すら確認できない状況になりました…。」

 「続けてください。」

 「4人は立ち向かい…しかしその勇気は報われなかった。俺はそれが納得できなかったんです。それで伝説のポケモン『セレビィ』の力を借りてこの世界に来ました。」
 俺はやや声が荒くなって言った。

 「そうですか…。」
 しばらくサーナイトは俺の話を整理して、

 「私の未来予知では結果的にチコさんが2匹の激突を防ぐことが出来る鍵となる…。という事は解ったんですが…。」
 と言った。

 「やっぱりシンゴが何か関係してるのかしら。」
 チコは言った。

 「私たち普通のポケモンとは違う伝説のポケモンが関わっているからかもしれませんね。」
 サーナイトもその推測に続く。

 「シンゴはどう思う?」

 「え、俺?」
 と言われてもな。

 「うーん…。この世界に来てからはフリーザーにしか会ってないからなぁ…。」
 さっき伝説のポケモンの本を持ってきてたっけ。俺はぱらぱらとその本をめくって該当しそうなポケモンがいないか探した。

 でもそんなポケモン都合よくいるわけが…。(!)。

 「チ、チコ!このポケモンは?」

 「サン・ポケね…。え?『人の願いを叶えるポケモン』…ですって!?。」
 俺もチコも初めて知った。そんなに凄いポケモンだったのか。

 「サン・ポケ、ジラーチですね。この町はサン・ポケによって開かれたという伝説があります。一歩前進ですね。」
 前にここで見たな。

 「他に何か有力な情報があるか、引き続き探してみましょう。」

 俺達は少し元気になって、他の文献などもあさった。俺はその合間に『謎の声』のポケモンについても調べる。
名前がわかればこっちのもんだ。

 …。

 チコはまた本棚に向うとサン・ポケ関連の本を数冊持って来た。

 …。

 サーナイトもチコの持って来た本も読み出す。

 …。

 そして数時間たったがそれ以上の事は何も進展しなかった。そろそろお腹減ったな。昼食の時間だ。

 「サン・ポケは10人のポケモンが話した話の内容を全部聞き取ったり、移動に丸一日かかるような距離を一瞬で移動したり、かと思えば、一人の貧乏なポケモンに朝起きて一番最初に手に掴んだものを離さないように助言してそのポケモンはその日の夕方には物々交換で大金持ちになっていたそうよ!。凄いわねぇ」
 チコはもうかなり方向性がずれている。それ十中八九作り話だから。

 「さて、そろそろお腹もすきました。収穫はジラーチが関わっている可能性がある…ってことだけですかね。」

 「サン・ポケの足跡をたどってみるのもいい手がかりになるかもしれませんね…。」

 「サン・ポケはずっと宙に浮いていて、足跡を残さなかったんですって!」
 チコは相変わらず『サン・ポケの奇跡』という本を読みながら、そう言った。いやいや、それはさすがに無いだろ。それに『足跡』の意味が違うよ。

 「私はお昼ご飯を食べ終わったらちょっとその為に旅に出ようと思うんです。」

 「旅、ですか?」

 「ひとまずフリーザーに会って、それから他の町で似たような話が無いか探しに行ってみたいと思います。」

 「一緒に行きますよ!」

 「いえ、ここは私に任せてください。チコさんやシンゴさんにはこの町でのサン・ポケの情報を探って欲しいんです。」
 まぁサーナイトのほうが俺たちよりよっぽど大人だし、海を越えた旅はさすがの俺たちでも(資金とか)厳しいだろうな。

 「そうですか…。解りました!この町で調査隊を続けながら、頑張ります!!」
 チコの目がやる気にみなぎっている。良く見るとメラメラと燃え盛る炎が見えそうだ。

 「すいません。ありがとうございます。来週の土曜日までには帰ってくるのでその辺はご心配なく。」
 その心配はこの際、いいだろ。

 話もまとまった所で図書館を出て、3人で一緒に昼食をとった。(昼食代、全部払ってくれたよサーナイトさん。凄いなぁ)

 飯を食い終わって、俺とチコはサーナイトを見送った『お二人とも、頑張ってくださいね。私も頑張ります。』と言いながらサーナイトはメルカートを出て行った。なんか寂しいけど2〜3日すれば帰ってくるだろう。

 さて、そろそろ今日の依頼でもこなしますか。今日はどんな依頼が届いてるかな。早速伝言板を見に行くか。


―――――――――chapter18 サン・ポケの足跡:END chapter19 チームKHY? に続く―――――――