努力しても報われない。そんなのありえない。ずっとそう思ってきた。

――――――――――――――――――chapter10 新たなファミリー ―――――――――――――――――


 「シンゴ、朝だよっ!」

 「あ、おはようチコ」
 朝はやっぱりチコの声で目覚めた。だんだんと朝、早起きするのがつらくなくなって来たな。俺も環境適応するの早いな。  
 「う〜ん今日もいい朝だね」
 チコはてくてくと外に出た。

 「うん、そうだねチコ」

 すると、チコは何かに気がつき、 
 「あら、シンゴ、こっちに向かって誰か走ってくるみたい。誰かしら?」
 と言った。

 「え?あ、ホントだね。誰だろう」
 俺もチコと一緒に一歩外に出る。

 「ちょっと、あれ、ドーブルさんじゃない?」
 昨日の変な育て屋か。

 「あ、ホントだね。こんなに急いでどうしたんだろう」
 走ってる姿を見ても男だか女だか解らない。

 俺達がじっと見ていると、ドーブルが俺達の基地にたどり着いて、
 「Oh〜、S&Tのシンゴさん、チコさん。大変なんですよ〜タマゴちゃんが、タマゴちゃんが…」
 と言った。ドーブルは小脇にボールのような何かを抱えている。それにしてもこんなに走っても息は乱れない。どんな特訓をしてるんだ?

 「タマゴがどうかしたの?」 

 「孵りそうなんですよ〜、ほら!」
 小脇に抱えていたのは昨日俺たちが預けたタマゴだった。

 「それで、持ってきたのね」

 「ん〜、それが私のプライド…もといポリシーですから。タマゴが孵る瞬間はクライアントに見ていただきマ〜ス。感動の瞬間ですから〜、それはもう『SOエキサイティングッ!』で〜す。ちょっと失礼し〜ま〜すね〜。」  と喋りながらドーブルは基地に入り、俺たちの寝床であるワラの上にタマゴを置いた。俺たちも続いて基地に入る。

 「孵りそう…」
 とチコ。だんだんとタマゴが活発に動き出した。

 と思ったら上からヒビが入りはじめて来た。そして少しずつヒビが多くなってきて、

 「あっ!!」
 3人同時に声を出した(一人はどっちっかって言うと『Ohッ!』って感じだったけど)

 「オギャア!。オギャア!!」

 「産まれたわっ!」
 チコが最初に大声を出した。

 「ん〜これはこれはベリー元気な、スボミーちゃんですねぇ〜。ケ ベーラ!」
 普通のスボミーにしか見えません。

 「残念ながら私のジョブはここでストップで〜す。セ フィニ。では他のタマゴも見なく〜てはならないので、これでアディオ〜ス!」
 と言うとドーブルはやっぱり走って戻っていった。っていうか育て屋さんの仕事ってここまでなんだ。最後まで育ててくれると思ってた。

 タマゴから孵ったばかりのスボミーはすやすや眠っている。

 「ど、どうしようか」
 チコはかなり慌てている。俺に聞かれてもなぁ。

 「う〜ん。とりあえず、ご飯食べに行かない?腹が減っては戦は出来ぬって言うだろ」
 なんの戦だ?

 「この子と一緒に行くの?」
 チコはなんだか、まだオロオロしている。

 「ここに置いてくの?」
 いくら寝てるとはいえ。

 「それもそうだけど…」

 「じゃ、行こうよ。レストラン」
 俺は中央広場に向かった。

 「あ、ちょっと待ってよ、シンゴ!」

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 「ボンジョ〜ルノ!、おや?、チコさん、シンゴさん、その子は…?」

 「え〜っと。どこから話せばいいのかしら…?」
 俺達は昨日の朝サン・ポケ美術館で起きた事を説明した。

 「なるほどねぇ。そんな事があったんですか。」

 その時、突然スボミーが大声で泣き出した。
 「オギャア!。オギャア!!」

 「あわわわ。突然どうしたのかしら?」

 「きっと、お腹が空いてるんですよ。ちょっと待っててください。今温かいミルクを持ってきますから。」   意外に世話好きな人なんだな。 
 
 「はぁ〜い。スボミーちゃ〜ん。あたたかいミルクですよ〜。」
 そう言いながらスボミーに哺乳瓶でミルクをあげるバリヤード。なんだか、将来親バカっぽいな。

 ミルクをおいしそうに飲んだスボミーはまたすやすやと眠りだした。眠ってる赤ん坊を見て慌てていたチコは今度はそーっとほっぺたに触ったりなんかしている。小さくてかわいいな。

 それにしても、赤ん坊って大変だな。これじゃ調査隊の仕事、とてもじゃないけど出来ないよ。まさかダンジョンに連れていくわけにも行かないし。

 そんな俺達の複雑な心境をさっしたのかバリヤードが、
 「このスボミーちゃんをずっと付きっきりで面倒を見れる方が必要ですね。そんな方がこのメルカートにいればいいんですが。私も育ててあげたいのは山々なんですが、仕事で忙しいですからねぇ。」

 と言った。ずっと面倒が見れそうな人ねぇ。このメルカートにいる人ってだいたいなんかの職に就いてるからなぁ。そんな都合よくいるわけないよ。

 と俺が考えていると、チコが叫んだ。
 「一人だけいるわっ。付きっきりで面倒見れそうな人!」
 え?

 「あ、そうか。あの人だね、チコ!」

 「うん、そうと決まったらちゃっちゃとご飯食べていきましょ!」


 (俺達のやりとりを聞いてバリヤードは『はて?そんな人いたかな?』と言いたそうな顔をしていた)

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 この北東の道は、山に近づいていくためか、目的地に近づくほどどんどん道が険しくなっていく。ここを通るのはこれで2回目だが、チコは慣れてるのかすいすい行けるんだけど、俺はまだまだだ。
 
 お、見えてきた。風雲ドラキュラ城。(今、適当に付けたネーム)

 途中でスボミーがぐずりでもしないかと冷や冷やしていたが、どうやらお昼寝タイムに入っているらしい。

 「ム!またお前達か!!今日は何だ!?」
 とエレキッド。またってほどすぐ来たわけではないけどな。

 「今日はちょっと、この子の事をロズレイドさんにお願いしようかと思ってきたんだけど。」
 チコはちゃちゃっとバッチを見せてから、背中にしょっていたスボミーを見せた。それにしても良くあの険しい道のりを赤ん坊をしょって突破できたもんだな。

 「そうか!良かったな!。よしじゃぁ付いて来い!!」
 だからなにが良かったんだ?

 「案内しなくてもいいのにね。」
 チコはこっそり俺に耳打ちした。でもあの扉を俺たちがノックするのは、やっぱり緊張するからイヤだな。

 相変わらず寒い。暖房でもつけようよ。

 「(トントン)…ドン、S&Tのシンゴとチコです。ロズレイドさんに用があって来たそうです。」

 「そうか。通せ」
 相変わらず威圧感を感じる声だ。わずかな期間で威圧感が増したような気さえする。

 「たまには俺に用事を持って来い。おい!お前に客だ」
 ドンはエレキッドを下げさせた後、ロズレイドを呼んだ。相変わらず無駄な事しないな。

 「あら、あなたたち。何の用かしら?」
 ロズレイドは俺たちを見るなりそう言った。

 「実はこの子の面倒をロズレイドさんにしばらくお願いできないか、と思ってきたんですけれど…。」
 チコは背中にしょっているスボミーを見せながら説明した。

 「その子は?」

 「昨日サン・ポケ美術館でですね…。」
 チコは数時間前にバリヤードにした説明とほぼ同じ説明をした。

 「ちょっとその子私に貸してくれるかしら。」
 
 「は、はい。」
 チコはすやすや眠るスボミーをロズレイドに渡した。

 「うふふ。私の若い頃にそっくりね。」
 ロズレイドはスボミーを見てそう言った。ほんとかよ?。それにしてもいつも厳しそうなロズレイドの表情がかなり優しくなってるように感じる。

 ロズレイドはしばらくスボミーを見てから、
 「しょうがないわね。この子は私がしばらく面倒を見るわ。あなた達は調査隊だし、付きっ切りで面倒は見れないでしょうから。」
 と言った。
 
 「あ、ありがとうございます!」
 チコは深々とお辞儀をした。

 「どうやら新しいファミリーがまた一人増えたようだな。今回はちょっと厄介そうだ。」
 しばらく沈黙して俺たちの話を聞いていたドンが急にニヤッと笑いながらそう言った。厄介なファミリーのもう一人は多分エレキッドの事だろうな。あいつ、いかにも『押し入り弟子』って感じだもん。

 「あの、私たちこれで失礼します。」
 チコはドンに向かいなおしてそう言った。

 「今度来るときは手土産でも持って来い。おっと、生ものは無しだぞ。」
 ドンはうすら笑いを浮かべながら、言った。ジョークなのかマジなのか解らない。なんか怖いからジョークであると信じておこう。

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 チコは帰り道で、なんとなく寂しそうな顔をしていた。そりゃそうだろう。出来れば自分で育てたいもんな。

 「きっと、すぐに大きくなって帰って来るよ。」
 ありがちな励ましだけど、ここはこれが一番いいだろう。

 「うん。そうだね…。クヨクヨしててもしょうがないし、調査隊の仕事頑張りましょ!」
 なんだか無理してるみたいだ。気の強い女の子だなぁ。


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 昼飯を食ってから、中央広場に出ると、いつのまにか人だかりが出来ていた。3日前にチームポケドーロが全員集まったことで出来た群集や2日前にムクホークに呼ばれて出来た群集とは違い、なんだか皆『これじゃ仕事にならないじゃないか』と言った感じの愚痴を言っている。そのほとんどが調査隊だ。

 その群衆の中にガルーラおばちゃんがいた。(なんかこの人、どこにいても違和感無いな。)

 「あんれまぁ、大変なことになったもんだね。」

 「あ!ガルーラおばちゃん、何があったんですか?」
 チコと俺は群集を掻き分けながら、おばちゃんに近づく。

 「あぁチコにシンゴかい。あれ読んだかい?さっき警備隊が掲示していったんだけどね。」
 おばちゃんは爪で伝言板を指した。

 「まだ読んでないわね。ちょっと見に行きましょうシンゴ。」
 俺とチコは伝言板を見に行った。

 「えっと…『ポケモン警備隊よりメルカートの皆様へ

 先日ダンジョン「疾風の草原」において不審なポケモンが出現したとの情報がありました。

 我々はこの情報を有力なものであると判断し、本日より「疾風の草原」も含めたその周辺の「旅人の森」と「ささやきの森」を危険区域に指定し、進入禁止とさせていただきます。

 何卒、ご理解とご協力をお願いします。           警備隊代表:ムクホーク』…ですって」


 「これは困ったわねぇ。今よりレベルの高いダンジョンには行けるけれど、今まで行ったことないし、第一私たちのランクでクリア出来るかしら。」

 「まぁ2匹で行けば何とかなるんじゃない?」
 適当な返事。

 「う〜ん。まぁ出たとこ勝負で行ってみましょうか!。えっとこれ以外のダンジョンの依頼は…『銀の洞窟』で技マシンの『ちょうはつ』を取って来て欲しいんですって」
 
 「技マシンを取って来るの!?報酬は?」

 「700ポケね。いままで平均で報酬は400〜500くらいだったからかなり高いわね。」

 「うわぁ、高いね。」
 この間オタチで700貰ったけどあれは偶然だろう。

 「いままで行った事ないんだよね?銀の洞窟って所。」

 「そうね。依頼もかなり難しいし、それだけダンジョンも難しいの。今までそういうのは控えてきたの。」
 意外に慎重なんだな。

 「でも頑張りましょ!きっと何とかなるわ。でも一応商店さんで道具そろえてから行きましょうか!」
 
 大丈夫かなぁ。ダンジョン内で倒れたら調査隊はどうなるんだろう?

 大きな不安を抱えながらひとまずカクレオン商店に向かった。


――――――――chapter10 新たなファミリー:END chapter11 金色のポケモン に続く――――――――