けっこうハードな要求だけど、
「はい」
多少の犠牲は仕方ないだろうね
「しかし」
出来ないって言うのかい?
「解りました…」
――――――――――――――――――chapter2 スター登場!?―――――――――――――――――――
ダッシュで内側の入り口に向かう、不思議なもんだよな、さっきまであれだけ周りをキョロキョロしていたのに、こうなった瞬間、ぼくの視界に入るのは、通路から席へと通じる入り口だけ、案の定、ぼくは人とぶつかった。
「いてッ!!」
いやいや、魂が入れ替わったりはしませんでしたよ、念のため。
「す、すいません!」
ぶつかった相手はワニノコ、ぼく達と同じように肩からショルダーバッグを背負っているが、向こうのは四角い。近くにチームメイトとおぼしきチコリータとロゼリアがいる。
「ちょっと何やってんの?」
リアフに叱られた。なんだかんだ言ってテンション上がってるんです、ごめんなさい。
「いえいえ!良いんですよ!!こっちもよそ見してましたから!!ほら!シンゴも謝って」
すかさず向こうのチコリータは早口でそう言った、シンゴとは、向こうのチコリータの目線から察するにワニノコの名前だろうか?
「ご、ごめんなさい…」
チコリータに促がされ、ワニノコは頭を押さえながら、ぼくに謝ってきた。こっちだって痛かったんだぞう!
「まったくナウくない事やってるわね!こんなベタなシーンいまどき恋愛漫画でも見ないわよ!!」
早くも少しはなれたところにいるロゼリアはやや怒鳴るような口調だった、早く行きたいんだろうけど…な、ナウ?
「あ、ほんとすいません。もう大丈夫ですから。」
て、言ってさっさと和解しないとロゼリアが今にも怒り出しそうで怖い。
「ほら!大丈夫って言ってるでしょう!!さっさと行きましょう!!」
ね?、さっきより口調が強くなってるでしょう。
「う、うん。ほんとスイマセンでした!。」
最後にそれだけ言うと、向こうのチコリータはワニノコと共に、物理的にではなく心理的にロゼリアに引っ張られるような形で向こうに走っていった。
「なんだかあの3人、私達に似てない?」
リアフはその3人の姿が通路のカーブに飲み込まれてから、そう呟いた。
「なんで?」
ぼくはイーブイだし、それにこっちは2人組だ。
「ううん、なんとなくそう思っただけ」
チコリータは一緒だし、ぱっと見の印象では性格も結構似てるみたいだけどさ。
「あの人たち、相手チームの町の人たちかな?」
チームのバッグ、デザイン全然違ってたしな。
「多分そうね、メルカート、だったかしら」
そうだ、そんな名前だったっけ。
そうそう、違う町の人たちと何不自由なく話しているが、相手チームの町とぼく達の町のエル・パライソの言葉は姉妹の言語、と言われるくらい良く似ているらしい。リアフに前そうやって聞いたことがある。実際に話すのは初めてだけど、確かに全然違和感なかったな。まぁそこまで覚えてるんだったら、ぼくも相手チームの町の名前ぐらい覚えておけよって話だけどな。
「え〜っと、この辺でいいかしら。ねぇイブ?」
結構遅めに来た割には、想像以上に良い席だ。それにしても開場したばかりだというのになんだこの人の多さ。
おぉ、今、リアフよりはるかに凝ったペイントをした人が通った。顔中ペイントだらけだ。むしろあれが顔なんじゃないかってぐらい。凄いなぁ。
「ぼくもあんなのリアフにして貰いたかったな…」
ぼくは膨れながら、リアフに言う。勿論じゃれあいだけどね。
「はいはい。」
リアフは笑いながらぼくの発言を受け流す。
うむ、はじまるまでまだ時間がある。売店でも見てこようかしら?。
「ねえ、ぼく売店見てきて良い?」
リアフ一人残すことになっちゃうけど、という小さい罪悪感を感じながらおそるおそる聞いてみた。
「うん、ついでに今日の朝食お願い」
良かった、どうやらリアフもそうなるであろう事をだいたい予測していたらしい。
通路に出ると、やはり同じように、朝食の買出しに出て来ている人がけっこういる。
みんなどことなくそわそわしてる。気持ちは解るが落ち着けよ。
さて、何を買おうかな。人の列が出来るだけ長いところがやっぱり美味いだろうか?
とりあえず人気のありそうなところのメニューを横から眺める。
こういうのって考えてるときが一番楽しいよな。
「やぁ!やぁ!イブ君じゃない!!」
こ、この陽気な声はっ
「れ、レイさん。来てらっしゃったんですか」
この陽気な声の持ち主はエル・パライソのレイのデリバード、あたりにはSPらしきゴーリキーが何人かいる。初めて会ったとき、レイってこの地方で王様って意味だよね?。と疑問に思ってリアフに聞こうとしたら、先に気配を察したかのように『ちっちゃいことは気にしちゃ駄目よ』と釘を刺されてしまったので、以降、気にしないことにしている。主人公のぼくでさえ気にしないことにしたんだ、みんなも気にしちゃ駄目だからな。
「あはは!そんな硬くならなくていいよ!ぼく達み〜んなアミーゴでしょ!」
み〜んなアミーゴ、ねぇ。
「そうそう!キミとリアフにピッタリの依頼があるんだけど、キミ達今日この後、なんかある?」
他の町ではどうか知らないが、少なくてもこのエル・パライソでは、一旦依頼はレイの元へ届けられ、それから各捜索隊の基地へと届けられる、普通は。まさかレイから直接依頼を貰うとは。
「いえ、特に急ぐ依頼は無いですけど」
うちの捜索隊は、まだランクは初級の初級だ。そんなもんだから、たいして難しい依頼は届かない。でも普通は、難しい依頼だから捜索隊に頼むのであって、依頼その物の数がそんなに無くてなぁ、うちのチームは結構暇してる。正直ランクが上がれば依頼も増えるけど、そのランクを上げるためにはたくさんの依頼をこなさねばならない、というジレンマ。
「ほんと!良かった!『ドリッドの川辺』で、あるポケモンが迷子になってるから、保護してあげて!」
ドリッドの川辺、は雰囲気でも解るかも知れないが、初心者用のダンジョンだ。もう何回、最下層まで行って脱出したことか。
「あるポケモンって言うのは誰なんですか?」
ドリッドの川辺に行くのは簡単だろうけど、そのあるポケモンって言うのが解らないと探しようが無いような。
「やだなぁ!それが解ってたらいくらなんでも言ってるよ!!」
レイはぼくの肩をバンバン叩きながらそう言った。まぁ確かにそれもそうか。しかしそれ一つで難易度は段違いなんですけれど。依頼主も名前ぐらい書いといて欲しかったなぁ。
「じゃぁ、これ!渡しとくね!」
デリバードから渡されたのはどこにでもありそうな無地の封筒。だからと言って決してラブレターの類が入っているわけではない。これは捜索をお願いする依頼だな、噂ではレイの手下が捜索隊用に清書しているらしい。本来なら、さっきも言った通り、これが郵便でうちの捜索基地に届けられているはずなんですけど。
「チャオ!」
渡し終わると、満面の笑みで去っていった。きっと超VIP待遇の席から試合を見るんだろうな。ぼくはレイに軽く、れ…お辞儀をした。危うく意図しない洒落を言うところだった。
おっと、一瞬、朝食買うのを忘れてリアフのところに戻りそうになったぜ。う〜ん朝ご飯はエル・パライソ風サンドイッチで手を打っとくか。
「お待たせリアフ」
容器に入ったサンドイッチを両手に持ちながら、席のあるところに戻る。
「遅い!帰ろうかと思っちゃった!!」
まぁそう言わずに。
「ごめんごめん、途中でレイさんに会っちゃってさ」
ぼくは片方をリアフに渡しながら、席に着く。
「いただきます。え?レイさんに?。」
食い始めるの早っ。よほどお腹すいてたんだろうな。
「うん、はいこれ。『ドリッドの川辺』で捜索依頼だって」
あの人も自由な人よね、と言いだしそうな顔でリアフは手紙を受け取る。
お、少し難しい顔をした。解る、解るぞ。迷子探しなのに依頼主不明なのが不満なのだろう。
「あ、ほら、そろそろスターティングメンバー発表よ!」
もうそんな時間か。
ぼくらの応援しているチームは地元エル・パライソのチーム、FCコスタ・デル・レイだ。
たくさんの主力メンバーが要るけど、今日は誰が出てくるんだろう。楽しみ楽しみ。
―――――――chapter2 スター登場!?:END―chapter3 リーガ・エル・パライソ? に続く―――――――