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 ユウガはどうやら並外れた知能を持っているらしい。

 いやいや、こうやって言うのはそれなりの理由があるんだ。ただの身内自慢だと思ってくれても構わないが、とりあえず話を聞いてくれ。

 ユウガ、フルネームはドウハユウガだ。日本でもけっこう珍しいその苗字に見合う名前を考えるためにそいつの両親はわざわざ姓名判断の本まで買ってきたそうだ、で、『優雅』に育ちますように…って言う願いをこめて、『ユウガ』と名づけられたんだと。普段はユウガ、と気軽に呼ばれている。

 ユウガは『デボンコーポレーション』って言う会社の、一社員だ。

 デボンコーポレーションってのはこの世界のかなり有名な企業で、ポケモン関係の製品の開発と研究に置いての分野で多くのシェアを獲得している、超一流企業だ。普通は『デボン』って呼ぶな。

 デボンの作っているもので一番有名なのはやっぱり『モンスターボール』だろう。名前くらいは聞いたことあるだろう?ポケモンを捕まえる例の道具だ。他社の類似品は、デボンのに比べて、安いが、やっぱりデボン社のものが一番質がいい。類似品は名前がだいたい『ポケモンボール』…ま、この話はいいか。

 まぁデボンの事は俺が言わなくてもだいたい知ってるよな?。で、そこで働いているユウガなんだが、周りの連中が、やれ、モンスターボールやら、ハイパーボールやら、化石からポケモンを復活させる機械を作ってるときにだ、こいつだけは何の成果も上げられないのな。

 え?じゃぁ、並外れた知能持ってないじゃないか、って?。いや待て、話はこれからだ。

 なぜ研究が思うように進んでないかと言うと、ユウガには一つの目標があってだ、一つのチームを組んで、研究を進めているんだが、その研究が中々思うように進まないんだ。

 実を言うと、俺もそのチームの一員だ。だからユウガの事を良く知ってる。ユウガは無駄話と言うかなんというか、しょっちゅう完成したらどうなるかなんていう話を聞かせてくれるんだよな。

 で、その研究っていうのは、『いかにポケモンと人間を仲良くするか』って奴だ。たしかにこの会社はモンスターボールを作って、そのことにかなり貢献したかも知れない。でもユウガの最終目標は『少しもポケモンを傷つけることなくポケモンと交流する』という事。

 『ポケモン愛護団体』とかいうわけ解らない団体が最近、『ポケモンと交流するためにポケモンを傷つけるのはおかしい』とか主張しだしてな、それに対応するために新しく作られたチームだ。

 聞いたら解るかも知れないが、あくまでユーザーの苦情しのぎの為に作られたチームだから、資金もあまりまわってこない、そりゃぁ研究も進まないわな。でも、たとえ建前であっても『貴重なお客様』の要望は聞かなきゃならないのが大手企業のつらいところだ。

 一応言っておくが、モンスターボールを使っている当の『ポケモントレーナー』達はそんな事、気にしてもいない。モンスターボールには『投げて3秒!君にも大切なパートナー!』というキャッチフレーズが付いている。そんなところからも解ると思うが、トレーナーにとってはポケモンは一生を共にする大切なパートナーだ。傷つけたりしないのは当然さ。

 こういう愛護なんたら団体の主張って大体、関係者当人には『なに馬鹿言ってんの?』って感じなものが多い気がする。自分はこんな事、気にしてるんだぞ!っていうただの自己満足で、思いっきり空回りしてるんだよな。

 ちなみに、最近『タカラトミー』と言う会社が『ポケリンガル』というおもちゃを販売して話題になっている。『パートナーの言葉が翻訳できる!』っていうのがキャッチフレーズだ。

 そのおもちゃを使って、とある企業が町のポケモントレーナーのポケモンが今なにを思ってるのか、2000組に緊急調査をしたんだ。そしたら、なんと97%ものポケモンが『この人と一緒でうれしい!』と思ってたらしい。あとの3%は喋ってる言語が機械と上手くあわなかったらしく、認識できなかったか、いきなりの知らない人間を見てポケモンが緊張して何も喋ってくれなかったか、だそうだ。

 この結果を知ってポケモン愛護団体は『あの調査はポケモントレーナーを過激に擁護するためのヤラセだ!』と反論したらしいが、そうやって言うなら試しに同じ機械使って同じ調査をしてみろ、ってんだ。

 まぁそれをしないって事は…?もう解るよな。あいつら言うだけで何も裏を取るような事、しないんだよな。

 それに簡単に『ポケモンと交流できる機械』を作れというが、色々大変なんだぜ?

 まず第一に技術の確立だな、モンスターボールだって偶然の産物みたいなもんだ。ポケモンに『一切触れずに』心を通い合わせる方法…考えただけで頭が痛くなりそうだ。

 これからこの機械の事はしょっちゅう出てくる、そのたびにいちいち『ポケモンに〜』っていちいち言うのが面倒くさいから、これからは仮にこの機械についている名前『姿、形』と言う意味の『シェイプ』という名前で呼ばせていただく。

 第二に、悪者に悪用されないためにも法の整備、簡単に言えば使うための免許か資格を作る、、、と言ってもそれは国がやらなきゃならない事で、俺たち企業にはどうしようもない。たまにそれさえも企業に要望する奴がいるんだよな。どうせ、『シェイプ』が出来ても、それからやっと動き出して、法律出来るまでぐだぐだ数年掛けて、しかも施行するまでにもう1年掛かるんだろうけど。その間にもう手遅れになってるって。

 あとは特許やら登録商標やら申請しなくちゃならない。まぁモンスターボールの特許とった時も、国際規格にするべき、とかいう訳わからん主張で結局特許取り上げられたんだけどな。特許申請の為にいくらかかったと思ってるんだよ。まぁギリギリで『モンスターボール』の登録商標は取り上げられずにすんだけど。登録商標といえば、登録商標の証明用紙、10万円とか、高すぎるだろ。

 Wii本体にWiiリモコン3つに、ヴァーチャルコンソールに使うカード一番高い奴買っても、まだソフト10本分くらいあるぜ?

 DSにいたっては本体買えば、リモコンとか必要無いから、残った金額全部ソフトに当てれば…なんと17本も買える。そんだけ買えればもう充分にDS、エンジョイできるんじゃん?

 でもそんな愚痴ばっかも言ってられない、一応これがチームの仕事だからな。

 今日もいかに、『シェイプ』の技術を確立するかの会議だ。

 相変わらず形だけの会議で中身はまったくと言っていいほど進まずに、午前中が終了した。

 チームは全部で5人いる。まぁユウガ以外の4人はあまりこの話に関係ないだろうから、説明は省かさせていただく。もし必要になったらその時に、説明する。

 今日の午後はユウガのチームは外に出て実際にポケモンたちと触れ合ったり、ポケモントレーナーに触れ合ったり、場合によっては町の人たちと触れ合ったりして、研究のヒントを掴んでいる。という名目でもっぱら遊んでいる。1ヶ月に1回はこんな感じだ。

 最初のうちは5人とも真面目に調査してたんだが、あまりの経費の少なさにみんな段々と馬鹿馬鹿しくなってきて、今じゃ毎月訪れるこの日は、ほとんど自分の行きたいところに観光しに行ってるようなもんだ。俺はもちろんユウガについて行く。仲がいいからな。

 今日もとりあえず人が集まる公園に行き、適当に質問してあとはサボりだ。公園のベンチに座ってムックルに餌やったりしてる。…ほんとにデボンの研究員なのか?。たまに自信が無くなる。実はリストラ要員が与えられた仕事なんじゃないか?

 こんな事やっててもどうせ苦情対応だし、上の奴らはこんなチームの事、あんまり気にしてないからな、バレやしない。たとえバレてもあんまり変わらない気さえする。

 ずっと公園にいるとサボってるのがバレるから、そこから伸びる道路を適当に選んでプラプラする。この世界の道路は、トレーナーだけじゃなく、意味不明な種族の人間がいっぱいいるから、ていのいい隠れ蓑になる。ぶっちゃけ行けそうな観光名所はほとんど行ったからな。

 定期的にトレーナーに間違えられてバトルを仕掛けられそうになるが、みんな制服を見てデボンの研究員だとすぐにわかる、胸に社員章が入った名札つけてるし、背中にはデボンのロゴがでかでかと書いてあるからな…。

 デボンのロゴって見たことあるか?『「モンスターボール」のDEBON』、って奴。ゴシックに似たフォントで青っぽくデザインしてあるロゴだよ。わざわざ『DEBON』の『O』だけ斜めに線が入ってる奴。多分モンスターボールを意識してるんだろう。正式なロゴはその下に『CORPORATION』と言う字もわざわざ入れてあるが、だいたい商品についてるのは『DEBON』のトコだけだな。

 知っての通り、トレーナーになるのには資格がいるだろ?資格を持たないユウガと俺はバトルはしない。でもさすがのユウガは、バトル仕掛けそうになったトレーナーにすかさずアンケート取ったりする。

 で、話はこれからだ。いつものように草むらを掻き分けながら、手がかりを求めているようなふりしていると、慌てた様子で若い女の人が声を掛けてきた。なんでも少し先の空き地でポケモンが倒れているから手伝ってくれ、とかいう話なんだ。俺たちの背中のロゴが見えたらしく、『モンスターボール』のヒトだから…という理由で声をかけてきたらしい。そこに行ってみると、キノガッサが倒れていた。

 目と鼻の先にはポケモンセンターがあるんだが、40キロ近くあるポケモンだ。女の人一人で運ぶのは大変だろう。

 ユウガはそのポケモンを背負って、ポケモンセンターに連れて行った。その女の人も心配そうな表情で、後からついて来る。手伝おうとしたら、断られた。若い女の人の前だからって無茶したんだろ。俺は手持ち無沙汰でユウガの後をついて行く。

 ジョーイさんはいつもの調子でそのキノガッサを受け取って、助手のラッキーと一緒に、急いで診察室に運んだ。診察室のドアの注射器のランプが赤く点滅した。ユウガはその女の人と一緒に心配そうな面持ちで待った。多分俺もそんな顔をしていただろう。俺は、俺一人で調査に行こうとも思ったが、まぁ行けるわけが無く、二人と一緒にキノガッサを待つことにした。

 誰も口をきかない。長い沈黙に思えた。

 聞こえるのは時計の秒針の『カチ、カチ、』という規則正しい音に、時々ユウガが床を靴底で叩く『コツ、コツ、』という音だけだ。

 ここだけ時間が止まっているんじゃないかという錯覚にとらわれようかとした、ちょうどその時、ランプが消えた。

 扉が開き、中からキノガッサが出てくるが、ぐったりしている。それにジョーイさんとラッキーの顔も暗いんだ。

 「あ、あの!キノガッサは…?」

 ユウガは最悪の結果を思ったように問いただした。

 その様子にジョーイさんは困ったような笑顔で言った。え?

 ・・・まったく、笑っちまうよなぁ、『食あたり』だってさ。多分親切な誰かが、草タイプには与えてはいけない食べ物を与えてしまったんだろう、との事だ。でも良かった、大事にいたらなくて。

 ただ、応急処置はしたが、完全には直ってないそうだ。草タイプの食あたりの薬は隣町まで行かなくちゃ無いそうだ。
 
 隣町は遠い、とてもじゃないが歩いていける距離ではないだろう。

 だからユウガは隣町まで車にキノガッサを乗せて行くことにした。

 そして遅くなるといけないからと女の人を先に帰した。

 面倒なことになったなぁ、と俺が言うと、ユウガは『会社をサボる口実が出来た』と言った。そういえばこういう奴だった。

 デボンはポケモンに密接に関係している企業だし、こういう事で有給を取れる。

 ユウガはポケモンセンター備え付けのテレビ電話でさっそくデボンに連絡した。 

 するとそういうことなら出勤扱いにしてやると言われたらしい。キノガッサの生態が解るんだとよ。そうなのか?

 ユウガは取りあえずキノガッサをポケモンセンターに預けて、俺と一緒に車を取りに会社まで戻った。出勤扱いにしてやる代わりに会社の車を使えといわれたらしい。宣伝になるしな。

 出勤扱いとはいえ出来るだけさっさと帰りたい。出来ることなら最初から無視して帰りたいけど、デボンの看板背負ってるし、そういうわけにも行かないしな。

 俺とユウガは会社に急いだ。

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