―――――――――――――――――――――――mission3――――――――――――――――――――――――
俺たちはその日起きるなり定刻より早く会社に行き、社長に事情を説明。使えそうな機材をあらかたかっさらってから、急いで隣町へと続く道へ急ぐ。昨日決めたとおりに、今から、二人で謎のポケモンの事について調べに行くところだ。
昨日の夜はこの謎のポケモンのおかげで布団に潜っても、明日はどんな発見があるのか?と考えてばかりで、全然眠れなかった。まるで遠足を控えた子どもみたい?。いやいや、こんな大発見になろうかと言うことにわくわくしないほうがどうかしてるだろう。
謎のポケモンと出会った所まで、車を飛ばして、早速機械を使って昨日の謎のポケモンの痕跡を探す。そうそう、あいつと出会うきっかけになったキノガッサ、あの後元気になって帰る…と思いきや、まだ俺たちと一緒に行動してる。もしかして、なついたのか?
今使っている機械は、生命反応を探知する機会と、生物がいた痕跡を発見できる機械の2つだ。前者は大きな黒い画面に緑色の線で等間隔に升目が書かれており、中心から伸びた線がくるくると回っている。生命反応を探知すると、画面上に赤い点が表示され、ピーピーというけたたましい電子音でそれを知らせてくれる。後者の機械は持ち手の棒の先に円盤状の板が付いていて、それで地面をなぞって、反応があると、同じように知らせてくれる。素朴な疑問なんだけど、こういうのってなんでこんなうるさい電子音なんだろうな?。正直やかましくてしょうがない。
両方の機械には今のところ何の反応も無い。それもそうだ。こんだけ広い空間からあのポケモンのわずかな痕跡を探そうって言うんだから。これは何時間掛かるか解らないぞ。今日中に終わるかどうかも疑問だ。さえぎるものなどほとんど無い上に、地面からのて照り返し。さらにそよとも風は吹いていない。だから熱くて熱くてしょうがない。まぁこのあたりは風が吹いたら吹いたで、砂嵐みたいになってしまう。そうなったらとてもじゃないが調査できるような状況では無くなるだろうが。
キノガッサはさっきからあちらこちらをうろちょろしている。エンジン切ってある車に残るのは暑過ぎる。。キノガッサが、ユウガが持ってる車の鍵を奪って、車のドアを開けて、キーをさしてエンジンをかけるなんていうことは無理だろうし。
とりあえずやることが特に無い俺はその内キノガッサとたわむれ出した。何度も言うが、どうせ今日中に痕跡なんて見つかるわけが無い。もっと大人数で探せば別だけど。っていうかなんで俺とユウガだけなんだろう?。やっぱリストラ要員なのかな?
機械で探りながらしばらくして「なぁ…確かにこのあたりだったよなぁ・・・?」とユウガが聞いてきた。昨日あのポケモンと出会ったのは確かにこのあたりだったと記憶しているが、どうせそのポケモンの痕跡とやらは砂に埋もれちゃって機械じゃ探知できなくなってるよ…と思ったが水をさすようで悪いので黙っておいた。この発見は確かに凄いが、2人で見つかるわけが無いって。
向こうからやって来ない限りな、
え?あの影は…。そんな事って…。冗談だったのに。
これぞウソから出たまこと、こっちから見つけるまでもなく。それは向こうからやって来た。生命反応を探知する機械がピーピーと電子音を放つ。ユウガはそれを止めるためにその機械のスイッチをそっと切った。それにしても何しに来たんだろう…しばしの沈黙が訪れる。
「なぁ…お前、ポケモン、だよな?」
その沈黙を最初に破ったのはユウガだった。未知のポケモンを目の前にして気が動転したのかは知らないが、少し考えれば答えが解る質問をぶつけた。実にユウガらしくない。良く見ると冷や汗をかいている。やっぱり緊張しているのだろう。
「人間に見えるか?」
そのポケモンは昨日と同じように何もかもを見通したかのような目と、とても落ち着いた声でそう答えた。心なしかそのポケモンは少し呆れているように見えた。くだらない質問をぶつけられてウンザリしたのか、それとももっと何か他の質問をぶつけて欲しかったのかは今のところ、定かではない。
その態度に畏敬を感じたのか、ユウガはやや縮こまってしまったように見えた。ただでさえこのポケモンは普通のポケモンとは違う人を圧倒するような、気迫と言うか、オーラと言うか…を秘めている。やっとこさ投げかけた質問が意味の無いものと一蹴されたからか、それとも気後れしたのか、ユウガはそこから先の言葉に詰まっているように見えた。仕方ない、俺も怖いけど、聞きたいことなら…ある。
「な、何しに来たんだ?お前誰だ?」
う、スラっと言うつもりだったのに、すこし噛んでしまった。緊張も当然あるが、回りがほとんど砂漠みたいなところだから、それで喉が渇いたせいもある。けっして言い訳ではない。
「私の名前はルカリオ、私はこいつに会いに来た…。」
といいながらそのポケモンはユウガのほうを見た。ル・カ・リ・オ…というのがこのポケモンの名前か。それにしてもユウガに会いに来た?。どういうことだろう…。その一言は、見たことの無い人語を解するポケモンの前で、ただでさえ緊張しているユウガをさらにテンパラせた。しかし、そのユウガの様子に頓着せずに、ルカリオは話を続けた。
ルカリオの話はこうだ。どうやらユウガとルカリオのポケモンの波長がピッタリ合っているというのが、波導で解ったらしい。波導というのはこのルカリオのみが持つ特殊な力で、人やポケモンの場所を探し当てることはおろか、その善悪まで解ってしまうらしい。簡単に言えばもの凄いソナーみたいなものだろう。波長、というのはルカリオが言うには人やポケモンの持つ、一種のオーラのようなものだそうだ。それはよく解らなかったが、とにかく、それが一致すると、言葉を交わさなくても、お互いの心理や考えていることがよく解るそうだ。逆に言えば、そういう状態のルカリオのように人語を解するポケモンと人間は言葉を交わさなくてもいいという事になる。ちなみにルカリオは人語を解しているように聞こえるが、これは一種のテレパシーのようなものらしい。さらに言うと、ルカリオは人語を理解しているが、これはルカリオや一部の伝説のポケモンのみ可能なこと、らしい。もっとも波長が合ってれば、その可能性はあるそうだが。波長が合っていなくても、最高状態まで懐いたポケモンは一部、人間の言葉をある程度理解することもあるそうだ。
ルカリオの説明では波長なんて滅多に一致するものではなく、奇跡的にそうなった人間がまた来ていたので、なんとなく声を掛けて来たらしい。前述のようにルカリオは波導で、善か悪か解ってるので、善とわかった人間、しかも波長が一致したのだから自然に警戒心も緩んだのだろう。
「!、ルカリオ!、波長が合えば普通のポケモンでも人間と意思疎通が出来るんだな?」
その話を聞きながら何か考え込むような仕草をしていたユウガは突然声を張り上げ、ルカリオにそう聞いた。
「あ、あぁ…?。そうだが。」
ルカリオはちょっとあっけに取られたような表情でそう答えた。さっきまでの超越したような態度がウソなようだ。答えを聞いたユウガは急に水を得た魚のようになり、『会社に戻るぞ!』と言い出した。ぇ、え、え?。急にどうしたんだろう?ユウガはルカリオにお礼を言うと、持ってきた機械を急いで車に詰め込みだした。
「いつもあんな感じなのか?」
ルカリオは自然に俺に聞いてきた。いや…、俺も長いこと一緒にいるがこんなの初めてだ。
頭にクエスチョンが浮かんだままの俺とキノガッサが乗り込んだのを確認すると、ユウガはもう一度ルカリオにお礼を言って車を飛ばした。会社に戻るってことは今のところわかってるが、もっとあのポケモンのこと調べなくていいのか?。もしかして、今研究中の『シェイプ』に関することがルカリオとのたかだか数分の会話で思いついてしまったって言うのか?
俺の予感はずばり的中した。波長が一致すればポケモンと人間でも意思疎通が出来るようになる、という事は人間の波長を、機械を通して、ポケモンに合わせてやれば…。波長と言うのがどんなものか聞いたユウガはそれを科学的に解析した。結果、人間の波長を変えるには、人間のもっとも波長が強く出ている部分…。ルカリオの説明では手だ。手に一定の温度と湿度を持たせ、さらに特定の周波数を帯びた円盤状の物質を、ポケモンのレベルと波長に応じて、出来る限りすばやく回す必要があるという事がわかった。3つもの課題をクリアしなければならないが、この事はユウガのチームにとってかなりの前進だ。
ユウガは早速この企画を社長に話した。正直社長は『捕まえるやり方』の理論が確立すると思ってなかったのか、かなり驚いたような顔をしていた。
会社でこんな事をしてたからか、その日の帰りはかなり遅くなってしまった。だがユウガは論理だけとはいえある程度が出来上がったようなものなので、とてもうれしそうだ。
ユウガのうれしい顔を見ると俺までうれしくなってくる。
*「…大変そうだな」
「あぁ、でもけっこういいぜ?こんな生活も。なんだかんだ気に入ったんだろ?」
*「まぁな」
「どうするんだ?このまま住み着くのか?」
*「そうだな…いい人だよな?」
「もちろん、ルカリオも認めただろう?」
「ん?何をお話してるの?」
「キノガッサはこれからどうするのか聞いてたんだよ」
「なになに…『キノガッサは…』はは、なるほどね。」
ユウガは手持ちのポケリンガルで俺の言ったことを翻訳した。
「多分、ここにいるとさ」
「うん、そうだろうね。だって家まで付いてきたんだから。」
*「なんだって?」
「えっと…」
「ほら、キノガッサ、パチリス、家に付いたよ。」
ふぅ、やっと我が家に帰れたな。おっとそう言えば俺の自己紹介がまだだったな?俺はこのユウガのたった1人の…おっと今は2人か。初代からのパートナーのパチリス。毎日デボンに出入りしてるが怒る奴なんて誰もいない。みんなやってるしな。でも会社の制服そっくりに作った服を着せるのはちょっとやめて欲しい。まぁこのくらいなら気にしないけど。
最初に『ユウガはどうやら並外れた知能を持っているらしい。』って言ったよな?。ルカリオとのアレだけの会話でコレだけの事が思いつくなんて、凄いと思わないか?
――――――――――――――mission3:complete styler-tale finished――――――――――――――――